野手でくすぶっている選手と言えば忘れてはならないのが平沢大河(ロッテ)だ。2015年のドラフト1位で入団し、3年目の2018年には62安打、5本塁打をマークして才能の開花を予感させたが、その後は故障で低迷。昨年、今年と2年連続で一軍出場ゼロに終わった。二軍では最も多くの打席を与えられ、チームトップの8本塁打を放ってはいるものの、打率は2割台前半と低迷している。打撃の調子がなかなか安定しないことが大きな課題となっているが、来年で25歳という年齢を考えると、環境を変えることで才能が花開く可能性もあるはずだ。冒頭で触れたようにロッテはトレードを上手く活用しているが、自軍でくすぶっている選手の才能開花を促すような動きにも期待したい。
投手でくすぶっている選手としては鈴木博志(中日)を挙げたい。2017年のドラフト1位で入団し、1年目からいきなり53試合に登板。翌年には14セーブをマークするなどクローザーとして期待されたが、その後は制球難もあって低迷。昨年からサイドスローに転向し、今年は3年ぶりの勝利もマークしたが、18試合の登板で防御率5点台と結果を残すことができていない。ただそれでもコンスタントに150キロ前後をマークするストレートの勢いは全く落ちておらず、サイドにしてからマスターしたカットボールも面白いボールだ。リリーフ投手の再生に定評のあるロッテや、守護神のスアレスの去就が不透明な阪神などにとっては狙い目の投手と言えるだろう。
日本のプロ野球ではトレードというとマイナスのイメージがどうしても根強く残っているが、国吉や加藤のように移籍をきっかけに主力となる選手も確かに存在している。これから本格的にストーブリーグの時期を迎えることになるが、力がありながらもチーム事情で出番のない選手に積極的にトレードを持ちかける球団が出てくることを期待したい。
●西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。