暴力団の家庭はごく限られた場所でしか生きていけない(写真提供=大洋図書)
暴力団の家庭はごく限られた場所でしか生きていけない(写真提供=大洋図書)

 でも、国家がヤクザを「差別してもいい」とお墨付きを与えているのだから、地域が差別するのは当たり前ともいえます。だから、ヤクザの家庭には公助も共助もない。彼らの中にある唯一の共助は、同じ穴のむじなである、ヤクザや不良仲間だけになってしまう。ヤクザの子どもであることを認めてくれる存在は、不良やヤクザしかいないわけです。居場所がごく限られた狭い世界にしかない以上、結局は悪人たちの搾取のピラミッドの中に入ってしまう。その構図が、ヤクザの再生産を生んでいきます。

 そして、ひとたびピラミッドに入ると、皆が似たようなルートをたどることになります。特に女の子は恐ろしいほど似通っている。基本的には薬を打って売春して、妊娠して子どもを産んだ後に、男に逃げられて生活に行き詰まるというパターン。その先にあるのは虐待の連鎖か、別のヤクザとの再婚か、生活保護です。男の子の選択肢も、ヤクザ社会の中で勝者として生き残るか、あるいは敗者となって転げ落ちるかの2つしかない。昔はそこで勝ち続ければ搾取する側になれたのですが、今は暴排条例で締め付けられているので、どんなに勝ち続けても搾取する側にはなれないというパラドックスがあります。

――一般的には、こうした機能不全家庭で育った子どもたちは、NPOや児童支援家庭センターなど福祉とつながることが大切です。暴力団の家庭が福祉の網にかからず、孤立してしまう背景には何があるのでしょうか。

 ヤクザ家庭では、「行政・警察・児相といった公的機関は敵だ」というマインドを共有しています。子どもは「社会とつながるな」という教えを受けていますし、つながってしまったら自分の両親や兄弟はバラバラになってしまうリスクがある。子どもは家族の「裏切り者」になることを恐れて、助けを求めることができないのです。世の中にはさまざまな支援がありますが、公的機関に頼れない存在がいるということを、社会全体が認識しておく必要があると思います。

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警察のマル暴がヤクザ家庭に介入すべき