みらいbabyを立ち上げた羽布津碧さん(右から2人目)と櫻田智子さん(左)は「ママたちに一人じゃないよと伝えたい」(photo 編集部・深澤友紀)
みらいbabyを立ち上げた羽布津碧さん(右から2人目)と櫻田智子さん(左)は「ママたちに一人じゃないよと伝えたい」(photo 編集部・深澤友紀)
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 赤ちゃんの約10人に1人が、2500グラム未満の低体重で生まれてくる。家族は発達の不安や生活面の悩みを相談できず、苦しんでいる。AERA 2021年11月22日号から。

【写真】小さく生まれた赤ちゃんのために…

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 外出先のトイレの個室に入り、手動搾乳機を取り出した。洋服のボタンを外し、片胸ずつ搾乳する。ひざの上に置いたスマートフォンの画面には、保育器の中で眠るわが子の姿。こんな場所で搾乳をしている自分が哀れで涙がこみ上げる。でも、赤ちゃんに直接飲ませるママたちが使う授乳室はつらくて入れない。

「涙も体液なんだから。泣いているぐらいなら母乳を出せ!」

 そう自分を奮い立たせた。

 東京都豊島区に住む羽布津碧(はぶつみどり)さん(39)は、2歳9カ月の長女と9月に1歳を迎えた次女が早産のため1千グラム台で生まれた。それぞれ病院の新生児集中治療室(NICU)に1カ月半と2カ月半入院。羽布津さんは病院近くの「ドナルド・マクドナルド・ハウス」(入院する子どもとその家族が安価で滞在できる施設)に宿泊し、病院に毎日通った。

「普通、産後のお母さんは無理をしてはいけないと言われるけど、赤ちゃんがNICUに入院すると、その概念がなくなるんだなと感じていました」

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