一方、「CBSスポーツ」は、このことを「ESPN」よりもセンセーショナルに報じている。同記事の冒頭には、「大谷は日本メディアとの会見で、勝ちたいと再び表明した」と書かれ、「彼はチームが勝てないことにがっかりしていると表明し始めた」とも述べられている。

 そして、同記事は、「どうやら大谷は、シーズン終了以降もこの考えや感情から逃れられないようだ」と、今回の発言に至った経緯を推察した。さらに、大谷がエンゼルスに入団して以降、優勝から遠ざかっている事実にも触れ、「もし、大谷が競争力のないチームのためにプレーすることに不安を感じているのならば、延長オファーを楽しみにするだろうか」という疑問も投げかけた。

 同記事がこのような指摘をするのも、シーズン終了間際のマリナーズ戦(現地時間9月26日)後の記者会見での大谷が発した次のコメントが大いに関係している。

「もちろん、ファンのひとも好きですし、球団自体の雰囲気も好き。ただそれ以上に勝ちたいという気持ちのほうが強いですし、プレーヤーとしてはそのほうが正しい」

 これは、記者からの「エンゼルスに残留したい気持ちはあるか」という質問に対する答えだ。この質問がぶつけられたのも、来季がエンゼルスとの2年契約の最終年であることに加え、23年のオフには、FA権の取得も予定されているからであった。この発言はその後、現地で大きな波紋を呼んだ。エンゼルスの地元紙『ロサンゼルス・タイムズ』は、この発言の直後、「エンゼルスは大谷から警告を受けた」や、「彼は負けることにうんざりしている」と報じた。同紙に限らず、現地ではこの発言を巡り、しばらくは大谷を擁護し、エンゼルスのチーム事情を批判する意見が飛び交った。

 そういった背景があったことから、「CBSスポーツ」は、「彼のコメントは一見の価値がある」とこの発言を取り上げたのだ。そして、「彼の心に(不満が)あることは注目に値する」と、今回の質疑応答で最も注目すべき発言であったと述べられている。

 ア・リーグMVPの最有力候補(現地時間11月18日発表)の大谷は、その発言1つにしても、現地メディアから大きな注目を集める。今回の発言に関していえば、彼らは大谷の心境を理解し、「エンゼルスには彼が満足できる環境を作る必要が大いにある」ということを指摘した内容がほとんであった。前出のバーランダー氏も、翌日同氏のSNSで、この発言時の動画を添えながら、大谷が落ち込んでいたことに同情を示し、「エンゼルスよ、この男に救いを」とチームの補強を強く望む声を上げている。

 日本のメディアは、大谷の結婚や税金について大変興味があるようだが、現地メディアは、大谷の「勝ちたい」という気持ちに対してエンゼルスはどう応えるべきか、ということに注目しているようだ。(在米ジャーナリスト・澤良憲/YOSHINORI SAWA)

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