本来は、困難に陥っている人々に暖かい支援の手を差し伸べるのが最優先課題のはずだが、今の日本の政治ではその優先順位は非常に低いから、今後ますますこのような事件が増えても不思議ではない。
もう一つ、最近重要なことに気づいた。ジムが、10歳の日本人にAK―47を買うことを勧めるわけとして、護身の他にもう一つ理由を挙げていたこと。それは、「革命を率いるため」である。自分たちを守ってくれない社会を変えるためには革命しかないと考える若者は、「銃をもって立ち上がれ」という意味だ。
しかし、現在の日本では、今の社会や政治に不満は持っていても、それを自らの力で変えようとする人は少ないことが、先月の総選挙で明らかになった。銃を手にするどころか、投票用紙に候補者の名前を書く鉛筆を持つことさえしない人が多いのだ。
多くの人が選挙で政治を変えようと立ち上がるには、まだまだ日本の没落ぶりは不足しているのか。だとすれば、日本の没落を加速させるべきなのか。もちろん、それは悲惨な選択肢だから避けるべきだが、そうした考えに頷きたくなる自分がいるのが悲しい。
※週刊朝日 2021年12月3日号より
■古賀茂明(こが・しげあき)/古賀茂明政策ラボ代表、「改革はするが戦争はしない」フォーラム4提唱者。1955年、長崎県生まれ。東大法学部卒。元経済産業省の改革派官僚。産業再生機構執行役員、内閣審議官などを経て2011年退官。近著は『官邸の暴走』(角川新書)など