
そして、ミュージシャンとしての顔も見せたのが、フレディの歌う映像を見ながら発した「姿勢がいいよね」という言葉。ボーカリストとして長くステージに立ってきたからこそ、姿勢と発声の重要性に目が向くのだろう。
「JAZZ」のジャケットデザインをバスドラムに描いたロジャーのドラムセットが中央にどんと置かれ、ブライアンのギターとジョン・ディーコンのベースが展示されたコーナーでは、タムというドラムの大きさに注目していた。共演してきたドラマーより大きめなのだそうだ。
「ドカドカしたタムの音がロジャーの好みなのかもしれないね」
クイーン展は2フロアを使って展開されている。出口付近に置かれた、足を大きく広げ、片手を高く上げた黄色いジャケット姿のフレディ人形とのツーショット写真を撮り終え、ほぼ鑑賞は終了かと思ったとき、サンプラザ中野くんが釘付けになった部屋があった。4面の大型スクリーンにクイーン円熟期のライブ映像が流れるスペシャルシアターだ。

最初は立って見ていたが、途中からスクリーン正面の椅子に座り、熱心に見入っている。「手をとりあって」では一緒に口ずさむ姿も。
「これは、と思ったのは、映画館と違う映像が見られると気づいたから。目線の高さにスクリーンがあって、ブライアンのギターやフレディが歌う姿を目の前で見られるのは珍しいと思う」
なるほど。ライブの臨場感と没入感を体感できるスペシャルシアターだけはある。
見終わっての感想をたずねると、「楽しかったー!」と満面の笑み。ちなみに、「ライブエイド」のフレディを見ながら、くすっと笑った理由は?
「笑うでしょ。ステージをくねりながら歩くフレディのキュートな姿を見たら。クイーンのファンなら、あの姿を見てうれしくならないはずがないよね」
サンプラザ中野くんの感想を聞いていると、フレディが今も生きていて、私たちを楽しませてくれているような気になってくる。
そう、フレディとジョンには直に会えなくなったけれど、ブライアンとロジャーがいる。クイーンの音楽は永遠だ。だから私たちは過去のものではなく、クイーンを今も同じ時間を生きる存在に感じられる。その気持ちを胸にこれからも愛し続けていくのだ。(角田奈穂子=フィルモアイースト)
※週刊朝日 2021年12月3日号