■街の書店との違い
昨年12月2日に来店者が10万人を突破。3カ月間で6200冊超の本が売れた。約10万円の古書も売れている。
公設書店の先駆けは青森県八戸市の「八戸ブックセンター」だ。離島などを除き全国初の公設公営書店として16年12月に開業した。
市内の既存書店との競合を避けるため、民間書店が扱いにくい海外文学や人文・社会科学、芸術などの分野を中心に約1万冊が並ぶ。本との偶然の出合いを誘発する「提案・編集型」の陳列を採り入れている。
公共サービスとして書店を経営する発想はどこから生まれたのか。同センターの音喜多信嗣所長は言う。
「街の書店は、経営上の観点から扱う本が売れ筋に限られる傾向にあり、それ以外の本に出合う場がなくなってしまうことも懸念されます。商業的に回すのが難しいのであれば行政が担う必要がある、ということになりました。売り上げを伸ばすよりも本を読む人を増やしたい、幅広い分野の本を手に取ってもらうのが目的です」
■読む人も書く人も
八戸市では市民による読書会が盛んで、市内の読書会を束ねる連合会が50年以上の歴史をもつ。こうした「読書好き」の文化が根付く土地柄も背景にあるという。
センターには「本を書く人を増やす」目的もある。ギャラリーや読書会ルームのほか、登録すれば誰でも無料で何時間でも執筆に使用できる「カンヅメブース」も設置されている。本を読む人、書く人の両方を増やすことで「本のまち」の発展につなげている。
「街の書店」を支える政策の検討も進む。
自民党の国会議員でつくる「街の本屋さんを元気にして、日本の文化を守る議員連盟」は今春、本の流通改善のほか、ネット書店や図書館との共存を図るルールをまとめ、政府に提言する予定だ。(編集部・渡辺豪)
※AERA 2023年1月30日号