ローン完済年齢も上がってきている。人生100年時代、60歳以降も働くのが当然という意識を持つ人は多い。「10年ほど前までは、60歳以降は働かない前提で考える人が多かったのが、ここ最近は70歳まで働くことを見据えてローンを考える人が増えている」とは、首都圏を中心とした住宅購入における相談実績も多いファイナンシャルプランナーの飯田敏さん(FPフローリスト)。
Aさん夫妻も、仕事が生活の中心というライフスタイルを変えるつもりはなく、今後子どもを持つ計画もない。ともに働き盛りの40代。仕事は多忙を極め、帰宅は連日深夜がお決まりだ。終電を逃してタクシーで帰宅することも多く、会社のある都心に近いことは必須条件だった。40歳から35年のローンとなると、完済時の年齢は75歳。だが、繰り上げ返済を計画的に行うことで、60~65歳のローン完済を目指している。
「今の社会の流れを見ると、自分たちの頃には70歳まで働くことが当たり前の時代になっているのでは。年金には期待できないけれど、長く働くことで一定の収入は得られるはず」(Aさん)
こうした時代の流れに加えて、タワマンを購入するパワーカップルは「意外と生活は堅実」という点も特徴かもしれない。冒頭のAさん夫妻も高収入ではあるが、ブランド物を買ったり、頻繁に贅沢な食事をしたりするわけでもなく、夫婦一緒に毎月コツコツと貯金を続けている。頭金として1千万円を用意できたのも、浪費をせず、計画的に貯金してきたからこそだ。つまり、ぜいたくな暮らしをしたいからタワマンを購入したわけではないのだ。タワーマンションなどいわゆる高級マンションに住む理由は、ステイタスやブランド意識からではなく、Aさん夫妻のように「資産価値が優れていて、価格が下がりづらい」という背景から選ぶ人も多いという。
不動産コンサルタントの後藤一仁さんは言う。
「確かに都心のタワーマンションはよく売れていて、積極的に買おうとする動きが活発です。ただ、こうした物件を購入する会社員夫婦は、資産を持て余しているから買うのとは少し違います。自分たちの収入の中で買える範囲で、なるべく資産価値を維持できる住宅を求めており、“稼いだお金を減らしたくない”と考える人が多い」