コロナ禍で景気低迷ばかりが取り沙汰される現在だが、実は首都圏を中心に、高額の新築マンションを買う人が増えている。主な購入層は、「パワーカップル」とも呼ばれるAさん夫妻のような高収入の共働き世帯だ。首都圏のマンション価格は年々高騰しており、不動産経済研究所の2021年度上半期(4~9月)の新築マンションの一戸当たり平均価格は、首都圏(1都3県)で前年同期比10.1%増の6702万円。1973年の調査開始以来、上半期としてバブル期を超える最高値を記録し、高額の東京都心の物件を中心に人気が集まっている。
都心のタワーマンションといえば、不動産業界でも、以前は限られた富裕層のみが買う「特殊住戸」と呼ばれていた。一定の収入がないと買えない物件であることは今も変わりないが、その敷居は以前に比べると下がっており、積極的な購入層は世帯年収1千万~2千万円前後の会社員だという。Aさんはその典型例だろう。
なぜ、会社員夫婦がこうした物件の購入ができるようになったのだろうか。
まず、背景にあるのが、超低金利という今の時代だ。頭金をそれほど用意せずとも、長期のローンを組むことで、年収の高い会社員であれば6000~7000万円程度は容易に借り入れすることができる。夫婦ともに稼ぐ共働き世帯ともなれば、2人で1億円を超えるローンも組むことができる時代だ。大手銀行の借り入れ限度額は1億円が主流だが、ここ数年で高額物件用の借り入れ需要が増している背景から、新興金融機関では上限2億円超えまで対応しているところも多い。こうして夫婦両輪で多額のペアローンを組み、新築の億ションを共有名義で買っている世帯が増えているという。
「一昔前まで住宅ローンの返済額の目安とされていた『世帯収入の20~25%が上限』というセオリーが崩れ、過大なローンを組む人が増えている」
こう指摘するのは、大手デベロッパー出身の不動産コンサルタント、長谷川高さん(長谷川不動産経済社代表)。初めて家を購入する平均年齢は、40歳前後の現在。働き盛りで管理職などになり、それなりの収入を得られていると実感しやすい年齢だ。また、共働きが当たり前の時代になったことも大きい。
「少し前までは、夫婦共働きであっても、どちらか一方の収入を元にローンを組むことが一般的でした。ですが今は、夫婦両輪の“大車輪”のごとく、多額のペアローンを組む例が珍しくない」(長谷川さん)