東尾修
東尾修
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 西武ライオンズの元エースで監督経験もある東尾修氏が、接戦で盛り上がった日本シリーズを語る。

【写真】第5戦の九回、代打で決勝本塁打を放ったオリックスのジョーンズ

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 日本シリーズは第1戦から接戦、接戦で、見ている者からすればおもしろいシリーズとなった。過去2年はソフトバンク巨人に4連勝で終わっていたから、野球ファンの方々も新鮮な思いで見てくれたのではないかな。

 投手出身のヤクルト・高津臣吾監督、捕手出身のオリックス・中嶋聡監督が率いた決戦。どう1点を防ぐか、どう1点を取るか、の戦いになると思っていた。そしてお互いの3番、4番をどう抑えるかなど、勝敗は別にして僅差(きんさ)の戦いになると考えていた。

 第1戦。オリックスの絶対的エース、山本由伸に、ヤクルトは奥川恭伸をぶつけた。そこを避けなかったのは、奥川を2試合、先発で使うことを優先したのだろう。シーズン中もキッチリ間隔を空けて使ってきた高卒2年目右腕。短期決戦だからって、やったことのない中5日などで使えない。2回使うなら第1戦しかなかった。

 その高津監督、山本が投げた第1戦を守護神マクガフの逆転サヨナラ負けで落としたが、慌てなかった。第2戦では、高橋奎二が完封。100球を超えても球威のあった左腕を信じた。第1戦でセットアッパーの清水昇が32球で連投は難しく、マクガフは打たれた直後。そういったことを冷静に見極め、型にはめない采配で乗り切った。

 一方の中嶋監督も見事だった。1勝3敗と先に王手をかけられた第5戦。山崎福也を先発マウンドに送った。昔はよく、王手をかけられるとエースをマウンドに送ったけど、はっきり言えば、優勝するためには第5戦に勝たなければ、第6戦も第7戦もない。総力戦で第5戦をとりにいくことを決断し、その試合で19歳の紅林弘太郎の打順を上げ、20歳の太田椋を使い、その2人がそろって活躍した。

 残念ながらこのコラムを書いている時点で、第6戦以降は見えていない。だが、11月末となったこの時期に屋外の「ほっともっとフィールド神戸」での決戦。どんな戦いになるか想像もつかない。いずれにせよ、若い先発投手、ヤクルトは奥川と高橋、オリックスは山本と宮城大弥に託された。若手の台頭が目立った今季を締めくくるのも、また若手。悪くない。

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