夢グループおなじみのCM(夢グループ提供)
夢グループおなじみのCM(夢グループ提供)
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 コロナ禍の巣ごもり生活中、テレビで通販CMがやたら目立った。特に多かったのが健康食品や医薬品だ。「初回無料!」や「30分間オペレーター増員」などをうたい、購買を誘う手法も共通している。制作現場の舞台裏に迫った。

【写真】夢グループ・石田社長手書きの台本

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 数多くの企業がほぼ取材NGだったなか、唯一、取材に応じたのが社長自らCMに登場し、独特の福島弁とトークのテンポで話題となった「夢グループ」の石田重廣社長(63)。だが石田社長は開口一番、意外なことを言った。

「正直申しまして、私どもでは商品の売れ行きとコロナはまったく関係ありませんでした」

「わかっているのは、売れる、売れないは商品次第だということです。どんなにCMを出しても、お客様は欲しくない物は買ってくださいません」

 それゆえ、CMでは欲しくなってもらえるようにわかりやすく説明するのだという。

「大事なのはどこがおススメポイントで、金額はいくらか。そこを訴えるようにしています」

 石田社長がこの境地に達するまでには、長い試行錯誤があった。10年ほど前、夢グループは地方局で通販専門の30分番組を作っていた時期がある。

「番組を作るのに3カ月かけて準備して、お金もかけて期待に燃えて臨んだのですが、放送終了直後から私は青ざめてしまいました。だって電話が一本も鳴らないんです」

 30分番組はあきらめ、今度は60秒と120秒のスポットCMにした。短時間の映像なら、実際に放送して「もっとこうしたほうがいい」と思えば、すぐ作り直せると考えた。次第に商品は売れるようになったと言うが、悩みも生じた。

「商品が届くのが遅い」「破損してしまった、社長を出せ!」などクレームの電話が増えてしまったのだ。

「夢グループには芸能部門もありますので、歌手のマネジメントもしている。コンサートにいらしてくれたファンは喜んで迎えてくれるのに、どうして通販ではクレームばかりなのだろうと悲しい気持ちになりました」

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