約60キロ離れた硫黄島から撮影した福徳岡ノ場の噴火。戦後最大級の大噴火によって大量の軽石が流れ出した(写真:海上自衛隊第21航空群提供)
約60キロ離れた硫黄島から撮影した福徳岡ノ場の噴火。戦後最大級の大噴火によって大量の軽石が流れ出した(写真:海上自衛隊第21航空群提供)

■「軽石は塩抜きしないほうがいい」という意見

 これまでに宮出さんが採取した軽石は土のう袋で500袋ほど。

 軽石は土のう袋ごと水に漬けて塩分を洗い流す。ほとんどが直径1センチ以下の小さなものなので洗いやすく、「1回洗うだけで相当塩は抜ける」と言う。

 除塩した軽石は乾燥させ、腐葉土ともに土に混ぜ、コーヒーの苗木を植える際に使用する。

「コーヒーの苗木1本につき、最低でも土のう袋、1つは軽石を入れたい。軽石を入れてもまだ土壌の水分が多いので、土を山型に盛り上げたところに苗木を植えます。すると、サーっと水が抜ける。すべてこの方法に切り替えてから順調に育っています」

 その様子をテレビ局が取材し、全国に伝えられると、野菜農家や果樹園から宮出さんのもとにメールが届くようになった。

 興味深いのは軽石に含まれる塩類についての意見だ。

「軽石は『洗わないほうがいい』という意見が意外と多いんですよ。『塩トマト』をつくっている農家や、ミカン、ブルーベリー農園の人は『軽石を洗わないでミネラルを残して使ったほうがいい』と言う」

 トマトは比較的塩分が強い土地でも育つ作物で、本県の干拓地で栽培されたものは味の濃い「塩トマト」として知られる。

 希釈した海水を散布することで濃厚な味のミカンをつくっている農家もある。

■軽石のイメージが変わる

 最近、宮出さんは塩抜きしない軽石も使うようになった。

「洗ったものと、洗わないもの、両方を試していますが、いまのところ、何の差も表れていません。これから1000本ほど苗木を植える予定なので、あと1000袋は軽石を採取したいですね」

 海を越えて流れ着いた厄介者の軽石を使い、質の高いコーヒー豆を育てる。「そうすると、軽石のイメージはかなり変わるでしょうね」。宮出さんは期待を込めて語った。

(AERA dot.編集部・米倉昭仁)