10月、沖縄の青い海が突然、コンクリートを流し込んだような灰色に染まった。原因は8月に大噴火した小笠原諸島の海底火山「福徳岡ノ場」から流れ出した大量の軽石だ。11月末には石垣島や西表島など、先島諸島でも軽石の漂着が確認され、軽石の被害は南西諸島のほぼ全域に広がった。
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軽石の漂着が特に多いのは名護市の稲嶺海岸、国頭村の安波海岸、今帰仁村の諸志海岸など、沖縄県の北部地域だ。
軽石が原因で漁船のエンジントラブルも発生。12月1日時点で、漁船の被害は県内で131隻にのぼり、うち31隻は航行不能となった。北部地域ではいまも約半数の漁船が出漁を自粛する。県は港湾に流れ込んだ軽石の除去作業を本格化しているが、宜野湾市の宜野湾港や本部市の水納港など、まだ「対応準備中」のところもある(12月2日時点)。
漁業や観光産業などに深刻な影響を及ぼす軽石が漂着してからもうすぐ2カ月になる。今後の見通しはどうなっているのか。
「離島を結ぶ船の欠航は減っているようですが、軽石は風などの影響で漂流と消失を繰り返しています。その影響が今度どうなるのかは、まだ見極められない状況です」(沖縄県環境部喜友名康幸班長)
■軽石の有効利用には課題も
現在、除去した大量の軽石は仮置き場に積み上げられ、日を追ってその量は増している。沖縄県は、この厄介者の軽石をなんとか有効利用できないか、検討を進めている。
土木建築部は公共工事での利活用を検討しているが、工事資材用として使うには強度や耐久性などのデータを集めるのに時間を要する、という意見が上がった。
環境部は先月24日から漂流軽石の利活用について、民間事業者などからアイデアを募集。12月8日の締め切りまでにさまざまな活用方法が寄せられた。
「現在集計中ですが、道路の舗装材の一部、建物の壁などに貼る材料、除草剤、赤土の流出防止などに利活用できるのでは、というアイデアが集まっています。今後、『アイデア集』を作成し、沖縄県ホームページへの掲載を予定しています」(環境部吉元誠仁副参事)
ちなみに、一般の人が軽石を拾って持ち帰ることはできるのか。
「特に禁止していません。ただし、営利目的で大量に採取する場合は法律上、問題になる可能性があるので、公共海岸を管理する土木建築部の窓口である各土木事務所にお問い合わせください」(喜友名さん)