こうした現状を改善しようと、20年に法務省と厚労省が共同で検討会を発足させました。海外の事例に倣(なら)い、養育費が確実に支払われるよう、公的な制度として養育費の強制徴収や立て替えを可能にしようと検討していますが、なかなか進展しません。兵庫県明石市では20年から独自に養育費の立て替えと督促(とくそく)を行う事業を実施しています。しかし依然として全国的には多くの母子家庭が、支払われるはずの養育費を受け取れずにいます。学用品の購入にも困る経済状態で、塾代や受験料が出せないために進学をあきらめざるを得ない子どももたくさんいます。その結果、低賃金の不安定な仕事にしかつけず、親子で貧困が連鎖してしまうのです。
人は誰しも、いつでも、自助と共助と公助の全てがないと生きていけません。構造的に弱い立場に追い込まれた人が人生を立て直し、子どもの学びの機会を確保できるよう、養育費支払いの公的支援制度の実施が急がれます。
◎小島慶子(こじま・けいこ)/エッセイスト。1972年生まれ。東京大学大学院情報学環客員研究員。近著に『幸せな結婚』(新潮社)。寄付サイト「ひとりじゃないよPJ」呼びかけ人。
※AERA 2022年11月7日号