女子フィギュアスケートのエース・紀平梨花にまさかの黄信号だ。
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コロナ禍によるグランプリ(GP)ファイナル中止を受け、全日本選手権(12月22~26日)を前に、今季のデータが出そろった。精査すると、紀平の北京五輪出場ロードの険しさが見えてきた。
北京五輪の女子の出場枠は3。選考基準には大会での成績やシーズン中のベストスコアなどおよそ七つの項目がある。うち二つはこれから行われる全日本の成績にかかわり、全日本の優勝者は最優先で代表に選ばれる。
坂本花織は、すでに確定した五つの項目の全てで選考資格を獲得。次いで、三原舞依の3項目。三原は休養シーズンの影響で世界ランクを大きく落としたが、GPシリーズイタリア大会ではNHK杯の坂本を約0.6点上回る技術点を得ており、この項目国内1位だ。GPフランス大会でトリプルアクセルを武器に表彰台に上がった樋口新葉は、今季のランキングを上げて2項目で追走する。
一方、けがのためGPシリーズ2試合すべてを欠場した紀平が選考資格を得ているのは、過去3季分の成績で算定される世界ランクの1項目のみ。しかも、上位の坂本を追う状態だ。これでは、一発勝負の全日本で、ライバルを抑えて優勝するしかない。
紀平にはトップ選手ならではのナイーブさもある。ジュニア時代、既にトリプルアクセルをものにしていながらファイナルも世界選手権も表彰台に乗れなかった。シニア1年目、出場した全ての国際大会に優勝して臨んだ世界選手権も4位。昨年はジャンプミスを多発し、同大会7位。大勝負に弱いイメージがついてしまった。
もちろん、明るい材料もある。フィギュアライターの野口美恵氏は、「過去の経験があるからこそ、紀平選手は大きく成長しているはず。今季から紀平が師事するブライアン・オーサーコーチは、選手のメンタルをコントロールする術に長けています」と語る。
6日には、海外から帰国後の待機期間でも練習を可能とする特例措置が発表された。カナダ人のオーサーコーチは帯同できない可能性があるが、紀平の指導チームには長く師事した濱田美栄コーチの名もある。
選考基準の運用にはフレキシブルな部分もある。日本スケート連盟の公示には3人目の人選は「総合的に判断」と書かれており、必ずしも、単純な星取表どおりに選考が行われるとは限らない。
とはいえ、全日本で優勝し、堂々と北京へ行くのが最善の道。エースの爆発力に期待したい。(菱守葵)
※週刊朝日 2021年12月24日号