成田悠輔(なりた・ゆうすけ、37)/経済学者、米イェール大学助教授。最新刊に『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書)(撮影/写真映像部・東川哲也)
成田悠輔(なりた・ゆうすけ、37)/経済学者、米イェール大学助教授。最新刊に『22世紀の民主主義 選挙はアルゴリズムになり、政治家はネコになる』(SB新書)(撮影/写真映像部・東川哲也)
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 過去30年、日本の平均賃金はほとんど上がっていない。なぜ日本経済は低迷を続けているのか、希望の光はないのか。経済学者・成田悠輔さんに聞いた。AERA 2023年1月2-9日合併号の記事を紹介する。

【成田悠輔さんの2023’s My Trendはこちら】

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 テレビ等で成田悠輔さんを頻繁に見かける。肩書は経済学者、イェール大学助教授とされる。メインの仕事は何をしている?

「そもそも本業っていう意識がないです。説明する必要もないと思っていて。“いろんなことをやっていて、結局何をやっているかわからない人”でいいんじゃないかと。肩書も本当はなんでもいいんですよ。しょうもないメディアの人たちが勝手に編集しているだけです。頼まれなければ出ないですし、特に伝えたいこともないです。現にユーチューブなどで自らコンテンツを作り、発信したことは一度もないです」

 1年の半分を海外で暮らす。この取材時は米国から一時帰国したばかりだった。

「日本には4日います。そのあと南米に。目的? 瞑想しに行きます。遊びみたいなもの」

 成田さんが米国で居を構えるのはニューヨーク市北部だ。

「東京と比べて米国は給与も物価も1.5~3倍くらい。場所によりますけどね。生活の快適さのコスパで言ったら東京のほうがいいと感じます」

 主要国の平均賃金を見ると、日本だけが過去30年、横ばいというデータがある(OECD/経済協力開発機構)。米国と比べて約3分の2にとどまり、韓国に抜かれた統計もある。2023年は上がる方向に進むのか。岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」を掲げ、企業に給与アップを再三要請している。賃上げを渋ってきた財界トップの十倉雅和経団連会長も22年12月7日に記者会見し、23年の賃上げは22年実績を「超えてほしいし超えなければならない」と応じた。日本人の賃金が放置できないほど低いことの裏返しだ。

 成田さんは日本人の給与水準について「残念ながら順当な値段だと思います」と語った。

「日本人は労働生産性が低いことで知られています。日本はこの数字が先進国の中で最低水準です。利益を生み出す人が少ないから給料も上がらないのです」

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