AERA 2023年1月2ー9日合併号より
AERA 2023年1月2ー9日合併号より

■値上げできない日本

 成田さんは日本人が“効率の悪い働き方”をしている事実に加え、「雇われている側と雇う側の両方に原因があります」と指摘した。たとえば日本は商品の値上げがなかなかできない。

「モノやサービスを安く売っている限り、生産性は低く算出されます。モノも人も安売りされた結果、利益が出ないので給料を上げられない悪循環になる」

 値上げできない企業、値上げをしたら買わない国民。その結果、いつまでも低賃金。これが今の日本だ。解決策はないか。

「できることはあります。勤務先で給与交渉をする、転職で給与を上げようとする。ある調査では給与交渉をしたことがない人が7割もいるそうです。この現状を変えて一人一人がもっと『強欲』にならないと」

 いい人材を獲得するため高い報酬を出し、成果を出した人の賃金が上がる仕組みを整備しない企業側にも問題がある。

「個人は給与交渉する、企業は人材を買い叩かない、代わりにいい人材は大枚をはたいて取りにいく、などの文化が浸透しないと……」

 先進国の経済成長に取り残されつつある日本。一方で、NISA(少額投資非課税制度)やiDeCo(個人型確定拠出年金)を通じて自衛を急ぐ動きが顕著だ。売れ筋は米国株の投資信託。日本人が自国の株でなく海外の株に走る現状を、成田さんはどう見ているか。

「投資に国境はないですから、いま日本株より米国株を買うのは自然なことでは? よりリターンが出そうなものを買うのは当たり前ですよね」

 過度な“内向き”の風潮にも疑問を投げかける。

「高度成長期の頃はいいものを作って、どんどん世界に出ていき、モノを売っていたわけじゃないですか。その結果、日本は世界有数の豊かな国、そこに留まりたい国になった。でも豊かな日本に留まる日本人が増えたことで、いつの間にか“日本人は日本国内でがんばることが日本のため”という妄想がまん延してしまいました。ここ数十年で日本人は間違った愛国心を抱くようになっちゃったのかも」

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