ワクチンといえば、新型コロナ対策としては多くの人が3回目、4回目の接種に臨む局面を迎えているのではないか。ただ、現在、国内では2種類のワクチンが使われていることが思わぬ混乱を呼んでいる。
厚労省は9月12日に、オミクロン株の一つである「BA.1」に対応したファイザー製とモデルナ製のワクチンを特例承認。ところが、それからひと月も経たない10月5日には、ファイザー製の「BA.5」に対応したワクチンを特例承認したのだ。
政府は「どちらを接種してもよい」と説明しており、自治体にも、どちらの種類のワクチンが使用されているかを明示する必要はないと伝えているというが、単純に時系列で考えると、昨冬に流行したBA.1対応型よりも、今年流行したBA.5に対応したワクチンを打ったほうが効果が大きいようにも思えてしまう。果たして、どう判断すればいいのか。前出の岩田教授は次のように語る。
「どちらのワクチンにもそれほど違いはありません。免疫には細胞性免疫と液性免疫という2種類があり、液性免疫は感染を食い止め、細胞性免疫は感染後の重症化や死亡を防ぐ役割を持つ。どちらのワクチンでも細胞性免疫は十分得られるでしょうから、重症化のリスクは大きく下がりますし、液性免疫についても、最近の研究では従来型のワクチンでもBA.4やBA.5に対する中和抗体が十分にできるという結果が報告されています」
宮坂医師も、両者の違いをそれほど意識する必要はないとして、こう説明する。
「二つのワクチンがつくる中和抗体量の差は、私たち免疫学者から見れば誤差の範囲です。それよりも、接種の回数を重ねることで免疫が応用力を持つようになり、新たな変異株でもある程度、中和できるようになることに注目すべきです。追加接種は単に抗体を増やすだけでなく、質の良い抗体をつくるというメリットもあるのです。私はかねて、追加接種の時期が来ていればBA.5対応、BA.1対応、従来型のどれを打つのでも構わないと言っています」