「過去2年間はインフルエンザの大きな流行はありませんでしたが、これは日本への出入国に強い制限が設けられていたことも理由の一つだと思います。今年は5月くらいにオーストラリアでインフルエンザの流行がありました。入国規制の緩和でそうした地域などからウイルスが日本に持ち込まれ、流行する可能性が高いと思います」(中山特任教授)
新型コロナとインフルエンザは発熱やのどの痛みなど症状が似通っていて、検査をしない限り区別して治療するのは困難だと言われている。ただでさえ医療のひっ迫が警戒される中、2種類の感染症が同時に襲い来る「ツインパンデミック」となれば、混乱は避けられないだろう。
迫りくる危機に対して、私たちはどんな対策をとるべきなのか。重要なカギを握る要素の一つが、マスクだという。大阪大学名誉教授の宮坂昌之医師がこう語る。
「コロナとインフルエンザを比べると、インフルエンザのほうがマスクで防ぎやすい。コロナ対策をした国ではインフルエンザは流行していないのに対し、コロナが収まってマスクを外したタイミングで冬が来たオーストラリアでは大流行しました。マスクをこれまでどおり着用していれば、大きな流行にならない可能性もあります」
もう一つの対策は、やはりワクチンだ。新型コロナ用とインフルエンザ用のワクチンを同時に打っても大丈夫なのか、という疑問が浮かぶが、宮坂医師はこう強調する。
「インフルエンザワクチンによって働く細胞と、コロナワクチンによって働く細胞はまったく違う。同じ免疫系の中でも別々の兵隊が強くなるようなイメージで、その兵隊同士がケンカすることはありません。同じ日に両方のワクチンを打っても、問題ありません。米国では、副反応は増えないという臨床データが出ています」
もちろん、体調が悪い日には接種を避けたほうがいいのは大前提だが、インフルエンザ対策としても、ワクチンが果たす役割は重要なようだ。