ところで、今後もし「第8波」が大きく拡大した場合、医療体制は大丈夫なのだろうか。気になるのは、新型コロナの感染症法上の扱いを「5類」に変更するかどうかの議論が進んでいないことだ。
新型コロナは現在、1~5類のうち上から2番目に厳しい措置がとられる「2類相当」の扱いとなっている。ただ、昨今のウイルスの弱毒化などの変化を受け、指定医療機関でしか治療が受けられないなどの縛りがかえって医療崩壊につながる、といったマイナス面が指摘されるようになってきた。このため、季節性インフルエンザと同じ5類に見直すべきではないかという声も根強い。医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師はこう指摘する。
「今のルールでは陽性者は1週間程度の隔離となりますが、介護を必要とするような高齢者にとっては長期間の隔離は健康への大きな負担となり、そのせいで亡くなる人も出てくる。介護の専門家が入れないため、リハビリが必要でもできない、といった事態が起きているわけです。オミクロン株のような弱いウイルスの場合、患者さんの状況を見ながら柔軟に隔離期間を決められるようにすべきです」
すでに感染者の全数把握など一部については見直されているものの、岸田文雄首相は、5類への見直しについては慎重な姿勢を示している。
「8月には2類相当を見直す話が持ち上がっていたはずですが、安倍晋三元首相の国葬と旧統一教会の問題で支持率が下がったら、途端に立ち消えになってしまいました」(上医師)
もっとも、5類への変更はコロナ治療の医療費が自己負担となるなど、患者にとってのデメリットもあり、賛否は分かれている。前出の宮坂医師は次のように語る。
「5類にしたところで専門医の数が足りないため、どこの医療機関にでもかかれるようになるわけではない。私の知人でも半分くらいは、コロナは診ない、発熱外来は設けないと言っています。自分の病院で感染が起きたら死活問題だからです。政府は医療スタッフとベッドの確保、さらには国内でワクチンを製造できる体制の構築などに取り組むべきです」