谷本盛雄容疑者(提供)
谷本盛雄容疑者(提供)

 だが、10年8月末から急に無断欠勤が続き、連絡がとれなくなってしまった。結局、連絡がつかないまま、2か月後に退職となった。

 そして11年4月、谷本容疑者は事件を起こす。当時の報道によると、大阪市内に住む長男(当時25)の自宅を訪問した谷本容疑者は、室内で飲酒していたところ口論となり、長男の頭部などを包丁で刺し、殺人未遂容疑で逮捕されたのだ。

「谷本容疑者はしばらく刑務所にいたようだ。谷本容疑者は腕はいいが、職人気質というのか、カッとなることがある。ワシが『こうやった方がいいんじゃないか』とアドバイスしたりすると、顔を真っ赤にして『なんや』と怒りを露わにする。そして、しばらくはまったく口をきかない。気が短い男だった。今回も何らかの事情でブチ切れてしまったのかもしれない」(社長)

 大阪府警の調べで、谷本容疑者は西淀川区の自宅に放火した後、自転車でクリニックに向かったという。雑居ビルに到着すると、すぐさまエレベーターで4階のクリニックに上がり、無言で紙袋を温風機の側に置き、倒して火が付いて広がった。

「消防の放水もあって、防犯カメラが水浸しになったが、なんとか復旧することができた。その映像から谷本容疑者は温風機の側の紙袋を蹴り、火がついた後も、避難する様子はなかった。他の患者が逃げられないように谷本容疑者が火の中に入るような素振りもあった。それだけ強固な殺意があったと思われる。火が出る前に谷本容疑者がしゃがんでいる様子が防犯カメラに映っていた。別の何らかの方法で紙袋に火をつけたようだ。しかし、ライターなどは発見されていない」(捜査関係者)

 病院搬送時に谷本容疑者の持ち物を確認すると催涙スプレーのようなスプレー缶2本が胸ポケットにあったという。

「抵抗された時に使用するつもりだったのか。谷本容疑者がエレベーターをおりて、火が広がるまでわずか1、2分。用意周到、計画的な犯行と言える。雑居ビルの階段に落ちていた財布からクリニックの診察券、運転免許証が確認されたこともあり、谷本容疑者と特定できた」(同前)

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スプレー缶を胸ポケットに入れる