近畿大学3年の西奈槻(なつき)さん(21)はラーメン店を2店舗経営する。昨年春にオンライン授業が始まると暇と不安でいてもたってもいられなくなった。
「友だちと会って話をして、という日常がなくなり、バイトも減って暇に。このまま何もせずに大学生活が終わるかと思うとモヤモヤして、何かしなければという焦りが強くなりました」
■空き時間にラーメン店
何かしたい、おもしろいことと出合いたいと飲食店オーナーらを訪ね歩くと、居抜きで使える空き店舗を紹介された。
「飲食業に特に興味があったわけではないけれど、何かしないと始まらなかった。『やらせてください』と即答して、麻婆豆腐づくりに情熱を傾けている友人に電話し、麻婆ラーメンの店を始めることにしました」
やがて、ラーメン店経営を通して「若者に選択肢を示す」ことをミッションに掲げるようになった。今年10月には、近畿大学東大阪キャンパス内にも出店。西さんが所属する農学部は、同キャンパスから公共交通機関で50分ほど離れた奈良市にある。授業がある日は、店の裏に置かれたデスクからオンラインで授業に参加する。西さんは言う。
「学生の僕らがラーメン店をやること自体、ひとつの『選択肢』を示せたと思います。当たり前だったことができなくなって悩んだし、周りにも同じような人が多い。でも、自分の価値観を見つけるきっかけになりました」
■「併用できるのが理想」
慶應義塾大学3年の木暮里咲さん(21)は、中高生に対して社会課題への取り組みを促す活動を昨年10月に始め、今年4月には仲間と任意団体を立ち上げた。
「時間ができたこともあって、活動を始めました。北海道や京都に住むメンバーと一緒にやっています。オンラインで話すのが当たり前になったからこそできると思えたし、全国の中高生に参加してもらえています」
彼女が通う湘南藤沢キャンパスは、ゼミなどを除き、今もオンライン授業が中心だという。
「ゼミでキャンパスに行く日が楽しみだし、もう少し機会を増やして友人と接したい思いはあります。一方、講義の質は変わらないし、オンラインなら通学時間や空き時間を有効に使いやすい。併用できるのが理想です」
(編集部・川口穣)
※AERA 2021年12月27日号より抜粋