そんな状況で臨んだ今シーズン。その後のW杯では7戦終了時点でまだ表彰台なしと苦戦しているが、中ヨーロッパに入ってきた第6戦のドイツ・クリンゲンタール大会と、第7年オーストリア・ラムソウ大会では4位と安定してきた。
開幕戦のニジニタギルでも予選は1位と3点前後の差で2位と3位になっていたが、第6戦も2本目は2位のジャンプをしていて、第7戦は予選2位通過で本戦も2本目は強い追い風の中でも3位のジャンプをし、「条件次第では表彰台」という位置をキープし続けている。
現在の女子の状況を見れば、20年1月の札幌大会で初勝利をあげた時、「昨シーズンまではW杯も29位が最高だったのでやめるつもりだった」と話していたマリタ・クラマー(オーストリア)が、昨季の11戦7勝の勢いをそのまま維持して7戦5勝とダントツ。持ち味でもある飛距離を伸ばす能力に加え、昨季は苦手にしていた着地のテレマーク姿勢も改善してきて、強さはさらに磨き上げられている。
また平昌五輪で銀メダルのカタリナ・アルトハウス(ドイツ)も、ここ2シーズンは調子を落としていたが、今季は復活して第3戦で優勝した他、2位2回、3位2回で総合2位につけている。さらにサマーグランプリでいきなり活躍し始めたスロベニアのベテラン選手のウルサ・ボガタイも、優勝こそないが2位1回、3位3回と安定している。
昨季はクラマーを筆頭に、スロベニアやノルウェーの20歳前後の若い選手が一気に台頭してくるシーズンになった。そして今季は高梨と同世代のアルトハウスやボガタイが、その戦線に割って入ってきた。クラマーの強さは本物になった感は強く、若手もしっかり結果を出しているが、高梨もきっかけをひとつつかめば、新旧入り乱れた戦いに割り込んでいける可能性も高い。
オミクロン株拡大の影響で女子W杯の札幌大会と蔵王大会が中止になり、選手たちは帰国することが出来ずヨーロッパ経由で中国入りするような状況になってきた。だが昨季も高梨は帰国した他の選手たちとは違い、ひとりでヨーロッパに残って練習をし、状態を上げてきたという実績もある。他の日本選手にとっては厳しい状況も、高梨に関しては追い風になりそうだ。(文・折山淑美)