風の強弱も激しく、悪条件の中の戦いになった女子ジャンプW杯開幕戦のロシア・ニジニタギル大会は、6位と5位という結果だった高梨沙羅。「いいスタートは切れなかったが、自分のやるべきことをここからしっかり試しながらやっていけたらいいと思う」と、落ち着いた表情で話していた。
【写真】驚くほど大人の表情に…蜷川実花撮影でAERAの表紙を飾った高梨沙羅
いい結果を出せなかった原因はスタートゲートの座る位置が高く、すんなりと自分の助走ポジションを作り切れなかったこと。「ゲートが低めで腕で引きながらスタートできるタイプの方がやりやすい」と話す高梨だが、「これから試合があるジャンプ台は低いゲートもあるので、そこで課題を克服していけばいいと思う」とじっくり構えていた。
3度目の五輪で念願の金メダルを狙う高梨。前回の平昌五輪で銅メダルを獲得した後は、「今のままではトップで戦えなくなる」と、自分のジャンプスタイルを一から見直し始めた。そこからの2シーズンはW杯勝利も1勝ずつで、総合は4位。それよりも過去の7シーズンでは総合優勝4回で3位以内を外さなかった彼女にすれば、成績は落ち込んだ。
だが昨季は中盤から新たな取り組みが形になり始め、3勝をマークし、2位4回、3位2回でW杯総合は2位。今年は夏のサマーグランプリでも4試合出場で1位1回、2位2回、3位1回の成績で総合2位といい結果を残した。さらに、シーズンイン直前の10月末の札幌3連戦では全勝。「テイクオフの部分がけっこう安定して一定の角度で飛び出せているので、大きなミスもなく空中までつなげられている。これまではどんなに調子が良くても札幌の連戦で3冠を獲得できなかったが、今は自分のやりたいことが明確になっているし、自分から自発的に挑戦したいという気持ちになれている。そんな気持ちで冬のシーズンに入れるのは初めてだと思うので、ホッとしているというより楽しみな気持ちの方が大きい」と笑顔を見せていた。
特に札幌の最初の試合だったノーマルヒルの宮の森では、いろいろ試していたことがハマる感覚があり、空中部分で「あぁ、こうすればいいんだ」というのが見つかったともいう。それがラージヒルの2戦目と3戦目につながった。さらに男子とも一緒の試合だったことで、インスピレーションや刺激をもらい、冬に向けてやりたいことがさらに増えてきたと笑顔で話していた。