
大阪市の雑居ビル4階のクリニックで発生した放火殺人事件で、多くの命が奪われた。 いつ起きるかわからないビル火災から、どう命を守ればいいのか。専門家に聞いた。AERA 2022年1月3日-1月10日合併号から。
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大阪・北新地の雑居ビル4階のクリニックで12月17日に起きた放火による火災は、出火からわずか7秒で有毒の一酸化炭素(CO)を含む黒い煙が院内に広がったと見られている。建物火災で怖いのは「炎」より「煙」だ。亡くなった25人(21日現在)は全員がCO中毒だったという。想像を超える「密室」での火災の恐怖。職場や、訪れたホテル、ビルで火災に遭遇した際、どう命を守ればいいのか。
防災・危機管理アドバイザーで「防災システム研究所」(東京都)の山村武彦所長は言う。
「一般的に火災の煙は、まず天井にぶつかり横方向に広がってから下方向に向かい、滞留を始めます。そして、煙層に押され行き場を失った空気は、床と壁の隅に『空気層』を作ることがあります。逃げる際は、タオルやハンカチを鼻や口に当て、床から20センチぐらいでかがむように空気層がある壁伝いに逃げてください。煙で前が見えなくても、壁伝いに進めば必ず出口にぶつかります」
タオルやハンカチは、有毒ガスを遮断することはできないが、刺激性物質(白煙)に対する除去効果はある。また、タオルなどはぬらすと通気抵抗が大きくなり息苦しくなるので、ぬらさず使用したほうがいいという。
「階段は段の隅に空気層が残っている可能性があるので、そこの空気を吸いながら避難することができます」(山村所長)
COは無色無臭で、吸い込むと体内の細胞に酸素が十分行き届かなくなる。空気中の濃度が0.5~1%程度でも、1~2分で呼吸ができなくなるという。

■防煙フードがおすすめ
煙を吸い込まないために山村所長が推奨するのが「防煙フード」だ。難燃性の素材でできた透明のポリ袋で、頭からすっぽりかぶることで煙を吸い込むのを極力抑えられる。インターネット上でも一つ500円程度で売っている。携帯も可能だ。