この記事の写真をすべて見る

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「本」。

*  *  *

【興味】ポイント

(1)86歳になるまで本はかけがえのない存在だった

(2)不思議だが本を読みたいと思わなくなってしまった

(3)この世に対する興味が減ってきているのが理由かも

 戦中戦後の本のない時代の後、初めて手にした本は「むっつり右門」が活躍する『右門捕物帖』とやはり捕物帳の『銭形平次捕物控』でした。小学5、6年生の頃です。楽しくて、楽しくて、夢中で読んだ記憶がいまも鮮やかに蘇ってきます。

 次いで高校時代。戦後、ようやく刊行された『世界文学全集』を予約するために池袋駅の東口にあった新栄堂書店の前に並びました。さらに高校時代で覚えているのが『坊っちゃん』『三四郎』『吾輩はである』などの夏目漱石の作品です。『三四郎』が特に好きで、何回も読みました。そして、本郷界隈や東京大学へのあこがれを持つようになりました。これはずっと後になりますが、都立駒込病院に勤務していた頃、ハワイに出張して、観光に興味がなかったので、ホテルのベッドに居座り、限りなく広がる青空をバックに漱石の『虞美人草』を読みました。とてもいい思い出です。

 昨年、閉館になった九段下のホテルグランドパレスを30年以上にわたって東京での定宿にしていて、日曜日の午後3時にチェックアウトすると、神田神保町の東京堂書店に直行、店内を1、2時間徘徊しゆっくり本を見ました。そのうえで買い求めた2、3冊をかかえて、近くの揚子江菜館に行き、生ビールを飲むのを無上の楽しみにしていました。

 今でも、病院の居室は本であふれています。いろいろな方が本を送ってきてくれるので、増え続けています。

次のページ