希代の人気馬トウカイテイオーの引退から四半世紀あまり。産駒の成績が思わしくなく、その系譜が途絶えそうになった。テイオーの血を絶やすな! ごく普通の会社員がクラウドファンディングで資金を集め、1頭のテイオー産駒が種牡馬となった。それから3年。今春、超のつく良血繁殖牝馬との種付けが行われた。夏を越え胎内で順調に育っている“孫”に、テイオー復権の期待がかかっている。
1991年に、無敗で皐月賞とダービーの2冠に輝いたトウカイテイオー。「皇帝」と称えられたシンボリルドルフ(GI7勝)の産駒という血の輝きもあり、絶大な人気を誇った。故障に泣いたものの、93年の有馬記念で奇跡の優勝を果たし引退。種牡馬としての道を歩みだした。
競馬は血統のスポーツだ。皇帝→帝王の血脈は半永久的に日本競馬界に繋がっていくと思われたが……。海外から優秀な種牡馬が続々と輸入されたことも災いし、事態は思わしくない方向に。
テイオー産駒からは3頭のGI馬が出た。トウカイポイント(2002年マイルチャンピオンシップ)、ヤマニンシュクル(03年阪神ジュベナイルフィリーズ)、ストロングブラッド(05年かしわ記念)。
しかしトウカイポイントは気性の荒さが災いして、GIを勝ったときにはすでに去勢されていた。ストロングブラッドも種牡馬にならず、引退後に去勢され乗馬に。
牝馬のヤマニンシュクルは引退後に11頭の子を産んだが、さしたる活躍馬が出ないまま20年に繁殖牝馬を引退。20年に誕生したヤマニンティンクのデビューを待つという寂しい状況だ。
「08年、09年ごろから、さすがにこれはまずいんじゃないか、途絶えるんじゃないかと感じ始めたんです」
そう語るのは、会社員のHさん。血統に興味を持つHさんはその血脈を絶やしてはいけないと思い、19年に引退したテイオー産駒のクワイトファインを種牡馬とすることを決意する。