そもそも、郡は法的にはどんな位置づけなのか。地方財政や地方行政に詳しい成蹊大学教授の浅羽隆史さんは言う。

「実は郡は、都道府県のほか、市や町、村などとは違って、地方公共団体として位置づけられていません。行政上の区域(行政区画)ではなく、 あくまで地理上の区域を示した名前にすぎない。 東京にある政治の街『永田町』や、新宿の歓楽街『歌舞伎町』などと同じようなイメージです」

 地方自治のあり方や、自治体の仕事や役割などを定めた地方自治法には、「地方公共団体」として都道府県や市町村、 特別区などを挙げているものの、郡は含まれない。地方自治法で郡に触れているのは、新しく郡をつくったり、廃止したり、名前や区域を変えたりする時の手続きを定めた259条や施行令などごくわずかだ。

 浅羽さんは言う。

「地名や地理上の区域を示す名称は、その地域で古くから使われてきたものが多く、地域の住民や企業の中にも愛着やこだわりを持つ人は少なくありま せん。(行政上の)実体はなくても、郡があることでネガティブな影響はありませんし、一方で、あえて積極的になくす必要性も意義もない。郡を残すべきか、それともなくすべきか、国レベルで真剣に議論されたこともないはず。こうしたあいまいにも見える位置づけであることが、 今でも残っている理由の一つではないでしょうか」

 もともと、郡の起源は飛鳥時代までさかのぼる。8世紀初め、中央や地方の政治の仕組みを定めた「大宝律令」で、今の都道府県にあたる「国」の下の行政区画として「郡」が置かれた。郡の下には「里」(のちの郷)があり、郡のトップである「郡司」に任じられた地方豪族らが、その地域を支配したとされる。それ以前にも、郡の前身にあたる「評(こおり)」という行政区画があったという説もある。

郡の推移を示したグラフ
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議会が置かれ、立派な庁舎が建ったところも