全国に現在300あまりある「郡」は、不思議な存在だ。今は役場や職員も、そして財源や権限も基本的にはないのに、暮らしの中や地図の上では、はっきりと意識されている。ただし、その感じ方や接し方は地域や人によってさまざまだろう。
総務省統計局のサイト「e-Stat(イー・スタット)」 によると、全国の郡の数は9月初め時点で307ある。ただし、ここには北海道の郡は含まれていない。
道内の郡の数は、ほかの都府県に比べて圧倒的に多い。北海道庁によると、北方領土の五つの郡を含めて69ある。2番目に多いのは長野(14)、3位は福島(13)、 4位は福岡(11)だから断トツだ。
北海道では郡の上に「振興局(支庁)」 という行政区画が14ある。虻田郡や天塩郡のように、複数の振興局にまたがって存在する郡があったり、上川郡や中川郡のように、同じ名前の郡が複数あったりする。道内に上川郡は三つ、中川郡は二つある。
振興局は、郡よりも後になってできた。そのため郡とは別の基準で区域割りがなされた。複数の振興局の区域にまたがって存在する郡があるのは、そのためだ。
一方、上川郡や中川郡は、かつて道内にあった「天塩国」や「十勝国」のように、「国」の区割りにもとづいて分けられた経緯がある。このため、同じ名前でも別々の郡として扱われている。
後述するように、振興局のような出先機関や郡をつくったり、それらの区域を定めたりする権限は都道府県の知事にある。だから、北海道のように、地域の事情に合わせてほかの都府県とは違う形をとることもできる 。
東京都もユニークだ。八丈町(八丈島)や青ケ島村(青ケ島)といった島しょ部の町や村は、どの郡にも属していない。都が直接の“上司”だ。
いずれにしても、道内の郡を加えると、全国の郡の数は376ということになる。