防衛費を対GDP比1%から5年以内に2%に増やすことが既定路線になった。これについて、台湾有事の際に中国から沖縄を防衛するためにも必要だから当然だと思っている人が多いようだが、本当にそうなのか?
報道では、年末に国家安全保障戦略など3つの重要な政府文書を改定し、今後の日本の安全保障戦略などが決まると言うが、これは大嘘だ。
例えば、沖縄防衛のカギとして注目される「スタンド・オフ・ミサイル」は、相手の射程外から攻撃できる長距離射程を有し、沖縄の離島防衛に使うとされる。来年度概算要求で国産の「12式地対艦誘導弾」の射程を200キロメートルから千キロに伸ばす改良のために272億円を計上したと大きく報じられたが、7月22日号の本コラム「改憲なしで進む先制攻撃の準備」で書いたとおり、今年度予算で12式の改良は始まっており、防衛3文書改定の前に既定路線となっている。
長射程ミサイルを南西諸島に置いて、台湾海峡から北京まで幅広く攻撃できる能力(敵基地攻撃能力、自民党は反撃能力と呼ぶ)を前提とした戦略変更も着々と進んでいる。3文書改定は単なる形式に過ぎず、実態ははるか先を行くのだ。
これが本当に沖縄防衛のためというのならまだ、良いのだが、実際には、米国の対中戦争の準備に、日本が協力させられているだけだということもはっきりしてきた。
例えば、米海兵隊でインド太平洋地域を統括するラダー中将は日本経済新聞に対して、
・日本の「12式地対艦誘導弾」を米海兵隊の地対艦ミサイルと連携して運用すれば中国の艦船の動きを封じる作戦に有効
・12式の射程が延びるほど作戦の幅が広がるため日本の取り組みを支持
・米国の対艦ミサイル部隊の2027年ごろの沖縄配置に向けて日本政府と協議中
・日米は「情報収集能力」を増強すべし
などと述べているが、この言葉のとおり、前述の12式ミサイルの長射程化とともに、19年奄美大島、20年宮古島、22年度石垣島とミサイル建設が進んでいる。「情報収集能力増強」についても、22年に奄美大島、23年度には与那国島に電子線部隊が設置される。何から何まで米国の注文通りではないか。