正月早々お隣さんに焼きたてのアップルパイを頂く!(写真:本人提供)
正月早々お隣さんに焼きたてのアップルパイを頂く!(写真:本人提供)

 墓探しの時はシャカシャカ先頭を歩いていた父も、山の斜面を上り下りするスピードが毎回遅くなっていく。今回は時折ベンチで息をついていた。同じ場所に定期的に通い続けていると、止めることのできない時の流れを否応なく実感する。人生は有限なのだ。ならば今生きている時間を自分なりに精一杯大切にするしかないのである。

 帰りは駅前の老舗大衆居酒屋に立ち寄るのもお約束。最初の頃はそれぞれ定食を頼んでいたが、最近は食いしん坊の姉が煮魚や天ぷらなどダーッと注文し、ちょっと頼みすぎだよーと言いながら皆でテーブルいっぱいの皿をワイワイつつきあい片づけていく。食が細くなった父も勢いに押され次々手を伸ばすのを見て一安心。家族最大の楽しみが墓参りというのはなかなか良いものである。

稲垣えみ子(いながき・えみこ)/1965年生まれ。元朝日新聞記者。超節電生活。近著2冊『アフロえみ子の四季の食卓』(マガジンハウス)、『人生はどこでもドア リヨンの14日間』(東洋経済新報社)を刊行

AERA 2023年1月23日号

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