TOKYO FMのラジオマン・延江浩さんが音楽とともに社会を語る、本誌連載「RADIO PA PA」。「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」について。
【写真】「ククノチ テクテク マナツノ ボウケン」のワンシーンはこちら(全3枚)
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「こちらだいぶ凄(すご)いのが始まりました」。劇作家で演出家の長塚圭史からLINEがあった。彼はKAAT 神奈川芸術劇場で芸術監督を務めている。
「子ども向けですが、お父さんお母さんが抱きしめながら見つめる死生観に迫る快作です」
子どもと死生観。お盆のある8月は生と死が近くなり、その境界線が曖昧(あいまい)になる。茄子や胡瓜に割り箸を刺し、四足で立った胴体にご先祖様が乗るんだよと祖母に真顔で言われたことを思い出した。本家の居間では読経に来た住職がすすめられるまま酒を飲み、鬼のように顔を真っ赤にさせうつらうつら舟を漕(こ)いでいた。
祖父母は武蔵野の地主で、所有する畑に四季折々の花が咲き、子どもたちが所帯を持つとそこに住まわせた。僕ら孫は花の色彩に囲まれて育った。近所の竹林跡にスタジオジブリや宮崎駿先生のアトリエができ、僕の息子は学校の行き帰りに頭を撫(な)でてもらったりした。向こう側の世界の住人「となりのトトロ」や「もののけ姫」「千と千尋の神隠し」の作画もここでなされたのだ。
そんなことを思い出し、横浜に向かった。演目は『ククノチ テクテク マナツノ ボウケン』。電車内には親子連れが多く、今日は夏休みになって最初の週末だと合点した。
劇場に入るなりお面を渡された。森の絵が描かれている。ワクワクしてきた。子どもたちはお面を被って互いに驚かせあっている。
「お面(それは不思議な力を持っている)の準備はいいでスカ?」
「舞踏(=ダンス、それは不思議な力を持っている)の用意もできたカナ?」
これは「KAATゲイジュツカントク」のナガツカケイシから子どもたちへのメッセージ。
「私たちは、みんな生き物です。これは、生き物みんながそのココロに抱(イダ)くオハナシ。ホラ、音楽(ミュージック)も近づいてキマシタ。あそこに、コウエンが見エテキマシタヨ……。それではテクテクと歩み出し、ミエナイモノをミテミヨウデハアリマセンカ!」