私の住む都心のマンション周辺は病院が多く、一日中救急車のサイレンが鳴りっぱなし。
先日は近くの郵便局へ行ったら、「クラスター発生で働ける人がいないのでしばらくお休みします」といった趣旨の張り紙。
九州地方では、鉄道やバスの乗務員が足りないので、間引き運転やら休止やら、あらゆる場所で働き手が直撃されている。社会が動かなくなってきていることも事実だ。
社会を正常に動かすためのウィズコロナが、全く逆の現象を生んで感染者が増え続けて、医療や地域社会が崩壊寸前の皮肉な現状。
ようやく、尾身会長を始めとする政府の分科会が提言をとりまとめたが、なぜいつも同じことのくり返しなのか? 今までの経験から、予想される事態はわかるはず。ことが起きてからしか、いや起きてもまだ打つ手のない事態に、高齢者はハラハラ見守るしかない。
下重暁子(しもじゅう・あきこ)/作家。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業後、NHKに入局。民放キャスターを経て、文筆活動に入る。この連載に加筆した『死は最後で最大のときめき』(朝日新書)が発売中
※週刊朝日 2022年8月19・26日合併号