
だから、自分でプロレス団体を持って、いろいろやって苦労して、憧れの大鵬さんと同じように、大将と呼ばれるようになったときは快感を覚えたよ。さらに(レッドシューズ)海野がカラオケに行くと近藤真彦の「大将」を歌って、俺を乗せるんだ(笑)。
大将とか源ちゃんとか、俺にもいろいろと通り名やニックネームがあるけど、外国人選手のニックネームにも印象的なものが多いよね。一番最初に思い浮かぶのは“ネイチャー・ボーイ”リック・フレアーだ。金髪で見た目もしぐさも全てがカッコいい。彼も俺と同様に先代の“ネイチャー・ボーイ”(バディ・ロジャース)がいたんだが、俺は同じ時代で見ているから、やっぱりフレアーのイメージだ。彼のセコセコしない立ち居振る舞いは本当に優雅だったよ。ただ、そんな彼でも遊んでいて夜遅くに帰ると、奥さんにコスチュームや服を自宅のプールに投げ捨てられていたってね。海外のレスラーは本人よりも、家を守っている奥さんが強い。嶋田家みたいだ(笑)。
それから“美獣”ハーリー・レイス。彼はNWAチャンピオンを何度も防衛して、タフな人で、知名度と実力が合致していた。日本の居酒屋に来ると、何かよく知らないのに刺身の船盛やらなんやらをテンコ盛りで注文したいていた。「俺はチャンピオンだから注文も豪快なんだ!」っていうのを周りの客だけでなく、同業のレスラーにもアピールしていたんだ。(スタン・)ハンセンと(ブルーザー・)ブロディが『居酒屋「村さ来」は安くて最高だ!』って喜んでいるときに(笑)。結果的に最期はあまり裕福でなかったけど、チャンピオンらしい豪快な振る舞いをしていた人だね。
それから、なんといっても“千の顔を持つ男”“仮面貴族”のミル・マスカラス! 彼は来日したときも、15試合あるとしたら、15試合全部違うマスクに変えるし、シューズから何から全て、毎試合違ったりと、自分を「魅せる」ことに長けている人だったね。シャワーを浴びるときも直前までマスクを取らないで、浴びたらまたサッとマスクをつけるくらい、素顔を見せないように徹底していた。