もちろんこれは、先に断ったように机上の空論でしかない。やはり大谷の評価を難しくしているのは、負担の大きい二刀流を何歳まで続けられるのか全く予想できないことにある。仮に長期契約の途中で打者に専念することになったとすれば、投手としての大谷に支払う年俸は完全に無駄になってしまう。

 打者専念の大谷が年俸4700万ドルに見合う働きをすれば問題にはならないが、さすがにそれでも「払い過ぎだ」とする声を抑えるのは難しいだろう。大谷とて人間。30代後半になる10年後も現在と同じ活躍ができる保証はどこにもない。むしろ衰えると見るのが自然だ。現に前述のイエリチは大型契約後の20年から成績が急落。早くも不良債権化を心配する声が上がっている。

 将来のリスクを回避する手段としては、実際に残した成績に応じて払う出来高ボーナスの割合を多くする手もあるが、大谷がそこまで譲歩する理由も存在しないだろう。

 繰り返しになるが、大谷が契約を結んだ時点ではそれが適正額なのか判断しようがない。確実なのは、この契約に関わるGMや代理人たちが二刀流選手の査定における基準を作ったものとして歴史に名を残すということ。それが「先見の明があった敏腕」としてなのか、「空前の不良債権を生み出した愚者」としてなのかは、神のみぞ知る──。(文・杉山貴宏)

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