不調の主力同士を交換し、再生を図ったのが、03年1月7日に成立した中日・山崎武司とオリックス・平井正史のトレードだ。

 96年に本塁打王を獲得した山崎は、翌97年から本拠地が広いナゴヤドームに変わると、成績を落とし、02年は出場26試合、打率.192、2本塁打に終わった。

 中日に骨を埋めるつもりだった山崎は悩んだ末、「環境を変えてやるのも、ひとつの手」とシーズン終了後、自ら「出してください」と球団側に申し出た。

 一方、高卒2年目に15勝27セーブを挙げ、優勝に貢献した平井も、その後は酷使が祟り、この4年間、ほとんど結果を残せなかった。

 そんな平井を、オリックス時代に投手コーチとして指導した中日・山田久志監督が「オレが叩き直して見せる」の殺し文句で獲得に動いた。平井も「自分のいいときも悪いときも見てもらっている山田監督の下で、復活を目指したい」と二つ返事で移籍を了承した。

 同年、「今年もダメなら、もう終わり」と背水の陣で17年目のシーズンに臨んだ山崎は22本塁打を記録。平井も12勝と揃って復活をはたした。

 キャンプ直前の駆け込みトレードも、意外とイケることがよくわかる。(文・久保田龍雄)

●プロフィール
久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。最新刊は電子書籍プロ野球B級ニュース事件簿2021」(野球文明叢書)。

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久保田龍雄/1960年生まれ。東京都出身。中央大学文学部卒業後、地方紙の記者を経て独立。プロアマ問わず野球を中心に執筆活動を展開している。きめの細かいデータと史実に基づいた考察には定評がある。

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