そして9月に入るやいなや、一斉に稲刈りが始まります。これも機械が導入されていますから早いのです。あっという間に、一面黄金色の世界が土色の世界に変わってしまいます。

 しかし、そこにすかさず訪れるのが白鷺です。早朝から1羽で来ることもあれば、2、3羽でやって来たり、10羽を超える大集団で来ることもあります。いずれにしても、田の端の部分で、餌をさぐっている姿がいいのです。細くて長く、そして柔らかい首の動きが美しいのです。彼らは自分の美しさを知っているのでしょうか。私はその美しさにいのちの素晴らしさを感じます。

 ときに、どちらかというと嫌われもののカラスの集団と遭遇することがあります。しかし、争っているのは見たことがありません。それに心がなごみます。

 地球上、あらゆるところに、いのちがあふれています。まずは、そのいのちをしっかり感じることだと思います。そして、そのいのちを守っていくためにはどうすればいいのか。それを考えなければいけない時代に入っていると感じています。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2022年1月21日号

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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