——チカラと松本は「体の使い方、声のトーン、話す間、すべてが違う真逆のキャラクター」だという。そんなチカラを演じる上で大きなヒントとなったのが、この物語を生み出した遊川本人だ。今回は演出も手掛けていて、撮影現場での遊川の行動、誰かと喋っている様子なども常に観察している。

 これまでもきっと遊川さんが作り出すドラマの登場人物たちを媒介にして、ご自身が持っている世の中に対する感覚とか、問題意識みたいなものを伝えてこられたと思うんです。今回のチカラというキャラクターは、特にそれが強いんじゃないかと思う。遊川さんの中にチカラがいるのを感じるんです。それは中途半端ってことではなくて、現場で見ていると、誰かになにか言いたいときも「これを言うと傷つけるかな」「でもやっぱり言おうかな」とすごく気を使いながら葛藤している遊川さんを発見するときがあって。そんな姿を見て、「あ、なるほどなあ」と、チカラ像を学んでいるというか。変な言い方かもしれないけど、一緒にチカラをやっている感じがするんですよね。これは脚本を読んだだけでは感じなかっただろう部分で、現場で僕にそう感じさせることも含めて、遊川さんの演出の一つなんだろうな、と受け取っています。今はチカラを少しずつ体に馴染ませながら、丁寧に作り上げている最中かな。

芝居する上での楽しさ

——自分とはまるで違うキャラクターを体に馴染ませるうちに、プライベートでも役を引きずることはないのだろうか。

 まったくないです(笑)。 チカラに限らず、いかに自分と離れた役ができるか、それが芝居をする上での楽しさでもありますから。でもわからない、自分ではそう思っていても人から見たら影響を受けているかもしれないけど。……あります?(と、近くのスタッフに尋ねる)。あ、ないみたいです(笑)。まあ、撮影が始まった当初よりはチカラが持っているチャンネルにスムーズに合わせられるようになってきていますが、まだ始まってひと月ですからね。もし私生活にチカラの影響が出ることがあるとしても、もうちょい先なのかなという気はします。

 ただ、遊川さんとよく話しているのは、「計算して出てくるようなことは、あまりやりたくないよね」と。シーンを成立させるために必要な芝居はやりつつ、「+α」の部分でどうキャラクターとして命を吹き込めるかを常に考えています。そのためには、完全にチカラを自分のなかに入れて、「+α」を探らなきゃいけないんです。今は遊川さんにその負荷をかけられている感じはあります(笑)。

暮らしとモノ班 for promotion
大人のリカちゃん遊び「リカ活」が人気!ついにポージング自由自在なモデルも
次のページ