東京大学のリケジョたちが、必ずしも理数系が得意だからと理系を選んだわけではない。実は苦手だった人もいる。卒業生たちはどんな理由から理系学部を志望したのか。AERA 2022年1月24日号は、東大工学部社会基盤学科卒、お笑い芸人の石井てる美さんに聞いた。
* * *
白百合学園に中学から入って、中3まで、数学IAまでは楽しかったです。数学定理を覚えて、知能クイズみたいに解きました。図形も角度も実際にあるものだからイメージしやすかったです。
高校で数IIBになって、概念的なものが苦手だと思うようになりました。複素数って実体がない。化学の元素も見えない。英語はコツをつかめたので、校内テストで160人中10位以内の成績だったのですが、数IIBはどうしても30~40位台。頑張っても報われません。学校の中でも上にいけないなんて、「あっ、私、苦手なんだ」と。化学なんて最初に置いていかれたから、好きになるタイミングもなかったです。
しかも、塾に行くと、数学は私立の男子校の生徒がものすごくできるんです。それで「ますます私は苦手なんだな」って。男女で違うとは語りたくないけど、そう思わざるを得ない状況でした。
中学まで数学も理科も成績がよかったから、苦手になったことは、とてもショックでした。私は文系だと思いました。もう理数系を勉強したくなくなって、英語重視の私立文系に行こうかと一時は思ったほどです。
東大文科・類に入学したときは国際関係論コースに進んで、英語力を生かせる外交官になろうとなんとなく思っていました。でも、学部を選ぶときになって、安全保障の概念を机の上で学ぶのは実感がわかなかったんです。
工学部の説明会を聞きに行きました。社会にどう役に立てるかを具体的に追究する学問だなと思いました。私が気になった工学部社会基盤学科国際プロジェクトコースは、インフラを通して社会問題を解決します。海外で活躍するエンジニアを育てようとしていたから、国際的な仕事ができると思いました。