3大療法に次ぐ第4の療法として、免疫療法も期待されています。人間がもともと持っている免疫力を十分に発揮させることで、がんと戦おうというもので、ノーベル賞を取った本庶佑先生が開発した薬が有名です。しかし、この免疫療法もいまのところ、決定的な成果はあげていません。

 さらには、以前に紹介した(2020年11月6日号)、細胞から放出されるエクソソームという物質に着目して、がんの転移を抑えようという研究も進められています。また、ウイルスを使ったがん治療も始まっています。『がん治療革命 ウイルスでがんを治す』(藤堂具紀著、文春新書)に詳しいのですが、遺伝子操作で作ったウイルスが、がん細胞だけを殺して正常細胞は傷つけないというのです。免疫反応にもプラスに働くというのですからすごいのです。

 このようにからだに対する西洋医学の働きかけは、60年間の間に限界を抱えながら、進歩もしてきています。これに、こころ、いのちへの働きかけが加われば、がん征圧も夢ではないというのが、いまの私の思いです。

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

週刊朝日  2022年1月28日号

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