帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長

 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「がん治療の60年」。

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【弱点】ポイント
(1)3月でがん治療に携わってちょうど60年になる
(2)西洋医学は、限界を抱えながら、進歩もしてきた
(3)さらに、こころ、いのちへの働きかけでがん征圧を

 今年の3月で、私ががん治療に携わってちょうど60年になります。最初の20年は外科医として食道がんの手術に明け暮れました。次の5年は中国医学と西洋医学の結合によるがん治療を模索しました。そして、その後の35年は、人間をまるごと見るホリスティック医学によるアプローチを続けてきました。ホリスティック医学は人間の三つの側面、からだ、こころ、いのちのすべてに働きかける方法論です。

 このうち、からだへの働きかけは、西洋医学が得意としています。ホリスティック医学は、決して西洋医学の有効性をないがしろにしているわけではありません。

 西洋医学でのがん治療の大きな柱は(1)手術(2)化学療法(3)放射線治療の三つです。私はこの3大療法と60年間、付き合ってきましたが、それぞれの療法に弱点があり、それはいまだに克服されていません。

 まず手術ですが、内視鏡を使ったり、ロボットが導入されたりと、技術は向上しました。しかし、手術では目に見えないがんを取り除くことができないのです。そこに限界があります。

 次の化学療法も、以前に較べると、使い方がずいぶん確立されてきました。ところが化学療法では、がん細胞とともに正常細胞にもダメージを与えてしまいます。いわゆる副作用の問題です。この弱点を克服する薬が開発されてきていますが、まだ限界があります。

 放射線療法は技術が進歩し装置も高度化して、ピンポイントでの治療が可能になってきました。しかし、弱点があります。同じ場所への放射線治療は1度限りで、再発したとしても、2度目の治療はできないのです。

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帯津良一

帯津良一

帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

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