伊藤詩織さんは判決の後、東京高裁の前で、「1人ではここまでくることはできませんでした。ここまでありがとうございました」と語った(撮影/編集部・野村昌二)
伊藤詩織さんは判決の後、東京高裁の前で、「1人ではここまでくることはできませんでした。ここまでありがとうございました」と語った(撮影/編集部・野村昌二)

 伊藤さんは顔と名前を出して裁判を始めた17年から、さまざまな誹謗(ひぼう)中傷を浴びてきた。それでも闘ってきたのは、新たな性被害者が泣き寝入りしなくていい社会にするという思いだった。

 会見で、伊藤さんはこう語った。

「(高裁で)もしも負けてしまったら、日本に住めなくなってしまうのではないかと、恐怖と隣り合わせたでした」

 日本は、性被害に対して声を上げにくい社会だ。海外では「同意のない性行為」自体を犯罪とする国も増えているが、日本は刑法で性的同意年齢は13歳と定められるなど、性的同意の概念が低いと指摘されている。今も刑法の見直しに関する議論が進められているが、会見に同席した伊藤さんの代理人の角田由紀子弁護士は、教育の必要性を強調する。

「男性が圧倒的に強い日本社会の中で、性行為は相手の同意を得て何かをすることが基本的な原則になっていない社会。国際的な基準に合った性教育をするべきです」

 伊藤さんは、言う。

「個人として言えるのは、声を上げたら必ずどこかに届くということ。こうしたケースがあるということを頭の隅に覚えていただいて、同じようなことが起きないように、毎日行動していただけたらなと思います」

 一方、山口氏は判決を受け、「大いに不満がある」として上告の意向を示した。

(編集部・野村昌二)



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野村昌二

野村昌二

ニュース週刊誌『AERA』記者。格差、貧困、マイノリティの問題を中心に、ときどきサブカルなども書いています。著書に『ぼくたちクルド人』。大切にしたのは、人が幸せに生きる権利。

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