こう見れば、「異形の大国」は、かなり構造的かつ深刻な脆弱(ぜいじゃく)さをはらんでいます。だからこそ、「戦狼(せんろう)外交」と呼ばれるように外側に対して強く見せようとしているとも言えます。
これはロシアにも言えることですが、アグレッシブな動きというのは、弱さの表れでもあります。余裕があってアグレッシブな行動をとっていればいくつかの選択肢を選べますが、追い詰められた核大国がアグレッシブな対応をするのは非常に怖いことです。
一極主義的な断トツの覇権国家ではなくなりつつあるとはいえ、依然として超大国の条件を備えた米国よりも構造的な脆弱さを抱えた中国の弱さに目配りしながら、「異形の大国」と向き合っていく必要があります。
姜尚中(カン・サンジュン)/1950年熊本市生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科博士課程修了後、東京大学大学院情報学環・学際情報学府教授などを経て、現在東京大学名誉教授・熊本県立劇場館長兼理事長。専攻は政治学、政治思想史。テレビ・新聞・雑誌などで幅広く活躍
※AERA 2022年2月21日号