池谷:科学的に脳の回路構造を見ている限り、70歳、80歳になってもあまり衰えませんね。固有名詞は増えていくので、情報が多くなって検索に時間がかかって出にくくなることはありますが。

安住:そうですか、じゃあ言い訳なんだ。それこそ学者は60歳、70歳でもトップスピードで研究できますよね。

池谷:そうですね。日本では定年がありますけど、アメリカだと定年がないんです。だから、すごい業績を80歳になってあげる人もいるので、学者はおもしろい。私も今手がけている研究には将来ビジョンがあるので、少しずつ証明していきたいと思っています。

安住:私は、朝の情報番組が始まりましたので、情報番組の司会者としてもう少し高みを目指したいなと思っています。

池谷:そのうちAIが原稿を読むことも出てきますよね。

安住:アナウンサーはAIに取って代わられる仕事の代表格なんですよ。

池谷:でも安住さんのアドリブはAIには無理ですから。私はいつも、車を運転しているときにネットのニュースをAIに読ませているんですけど、この間、オリンピック選手のインタビューで「次はカネが欲しいです」と読み上げたんです。なんでカネが欲しいんだろうと考えて、「ああ、金(メダル)か」と(笑)。

安住:一番間違えちゃいけないところだ(笑)。

池谷:AIのおもしろさはそういうところですよね。人間はしないけど、AIがしそうなミスはある。これからは、AIが読み間違えないようなニュース原稿を書くとか、新しいテクニックが記者に必要になってくるのかもしれません。

安住:そうですね。テレビは少し曲がり角に来ていますが、まだまだ戦える部分はありますので、足並みをそろえて新しいアイデアを取り込んでやっていきたいし、先頭に立ってやりたいな、という気持ちはあります。まあでも、人の気持ちは変わりますけど(笑)。

(構成/大川恵実、本誌・佐藤秀男)

池谷裕二(いけがや・ゆうじ)/脳の健康や老化について探求している。本誌連載をまとめた『脳はすこぶる快楽主義』(朝日新聞出版)、『できない脳ほど自信過剰』(朝日文庫)などが発売中。2013年、日本学士院学術奨励賞を受賞。

安住紳一郎(あずみ・しんいちろう)/1997年、TBS入社。他の担当番組はテレビ「THE TIME,」(月~木)、「中居正広の金曜日のスマイルたちへ」、ラジオ「安住紳一郎の日曜天国」。TBSの北京冬季五輪中継の総合司会も務める。

週刊朝日  2022年2月25日号

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