2月15日。ロシアトップ選手のドーピング問題で揺れる中、北京五輪フィギュアスケート女子の競技が、首都体育館でスタートした。
ここまで、個人戦は男子、アイスダンスの競技が行われたが、いずれも採点は厳格。男子では、ショートとフリー共に自己最高点をマークしたのは鍵山優真を含めた4人だった。トータルスコアでも、29人中12人。大舞台での緊張感もあっただろうが、どの選手も五輪を目指して調整してきたであろうことを考えると、決して多い数字ではない。アイスダンスに至っては、リズムダンスとフリーダンスの両方で自己ベストを出したのは、今季引退を明言している3位のハベル/ドノヒュー組だけだ。
そんな中、坂本花織はこの日行われたショートプログラム(SP)の演技で、昨年4月に国別対抗戦で出した77.78というスコアを2ポイント以上上回り、79.84点の自己ベストで3位に食い込んだ。
大会スタッフによる抽選で決まった滑走順は、30人中30番目。前走の選手のスコア全てが出揃った状態でリンクインしなければならない、難しい順番だ。
直前練習を終えてからリンクに上がるまでには30分以上の空白があり、複数の滑走者が演技を終えた後の氷面の状態も、良いとは言えない。歓迎される滑走順ではない筈だが、抽選結果を聞いた坂本は、「最終滑走の時は大体いつもいい(成績だ)から、そのイメージで」と笑顔を見せた。
最強ロシア女子の追撃一番手として大きな期待を寄せられながらも、自身が跳ばない高難度のトリプルアクセルを武器に、樋口新葉や韓国のユ・ヨンが追いすがってくる。精度の高いプログラムこそが武器の坂本は、一つもミスが出来ないという重圧を背負って、最終滑走者としてリンクに入った。
持ち味の伸びやかなスケーティングと、凄まじいスピードから繰り出す申し分のないジャンプ。ことに、コンビネーションジャンプでは、2つの跳躍の間に余分な間や態勢の崩れが無い。幅のあるジャンプと高さのあるジャンプをテンポ良く繋ぐため、ひときわ大きな加点を得る事が出来る。今大会、2点を超える加点を得たのは、配置された30人×7=210個の要素の中で、たったの3つだけ。なんと、そのうちの2つを坂本が得ているのだ。