ゴールデングラブ賞こそ一度も受賞していないものの、ファーストの守備に定評があった大砲としては大豊泰昭(中日阪神)を挙げたい。若手の頃は外野を守っていたが、落合博満がフリーエージェントで巨人に移籍した1994年にファーストのレギュラーに定着すると38本塁打、107打点で二冠王を獲得。ハンドリングに柔らかさがあり、捕球から送球の流れもスムーズで度々併殺を奪うプレーにも貢献している。ちなみに古田は歴代最も守備が上手かった一塁手として大豊の名前を挙げているほどだ。当時のセ・リーグのファーストは先述したゴールデングラブ賞10回を誇る駒田徳広がいたこともあって守備のタイトルには恵まれなかったが、隠れた名手として取り上げたい選手である。

 近年の強打の外国人で守備力が高かった選手として思い浮かぶのがロペス(巨人→DeNA)だ。2013年に来日して巨人に入団すると、いきなりリーグトップの守備率をマークしてゴールデングラブ賞を受賞。DeNAに移籍した2015年以降は打撃も守備もともに成績を伸ばし、2018年には守備率10割を達成。一塁手としての1632守備機会連続無失策はNPB記録である。日本ではほぼファースト専任だったが、マリナーズ時代には二遊間を守った経験もあり、出足の鋭さやグラブさばきの巧みさは見事だった。DeNAにとってはあらゆる意味で球団の歴史に残る外国人選手といえるだろう。

 名手というわけではないが、意外な守備力がある現役選手としては昨年ブレイクした杉本裕太郎(オリックス)を挙げたい。守備範囲は決して広くなく、昨年も外野手としては多い5失策を記録しているのは課題だが、特長はその強肩だ。高校時代は投手だっただけあってボールの勢いは申し分なく、コントロールも安定している。ちなみに昨年記録した11補殺はパ・リーグトップの数字である。もう少しスタートの動き出しなどが改善されれば、十分に守れる大砲として期待できるだろう。(文・西尾典文)

●プロフィール
西尾典文1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究。主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間300試合以上を現場で取材し、執筆活動を行っている。ドラフト情報を研究する団体「プロアマ野球研究所(PABBlab)」主任研究員。

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