東北地方では最大級の音楽フェス「ARABAKI ROCK FEST.」。2019年には約5万8000人を動員した。写真:(C)ARABAKI  PROJECT
東北地方では最大級の音楽フェス「ARABAKI ROCK FEST.」。2019年には約5万8000人を動員した。写真:(C)ARABAKI PROJECT

 2020年からはじまったコロナ禍は、日本のエンターテインメントに甚大な影響を与えた。なかでも深刻だったのは、コンサート業界。この2年間、全国の音楽フェスは軒並み中止になり、アーティストはもちろん、ライブ制作に関わってきた人たちは、ほとんど仕事がない状態が続いた。未だ収束の兆しが見えないが、今年、続々と各地の野外ロックフェスの開催予定が発表されている。主催者やミュージシャンの取り組みで、開催地の人々の意識は変わり始めている。

【写真】ARABAKIの「親善大使」をつとめるシンガーソングライターは

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■開催すること自体が批判の対象になった

 1年目(2020年)はコロナの特性もよくわかっておらず、有効な感染防止策が出来ない以上、「中止もしょうがない」「来年はやれるだろう」という雰囲気があった。しかし2年目(2021年)になっても事態はほとんど変わらず。「JAPAN JAM」(千葉)「VIVA LA ROCK」(埼玉)などの春フェスはいくつか行われたが、夏の大型フェスは次々と中止に。特に本番1カ月前に“医師会の中止要請”によって開催断念に追い込まれたROCK IN JAPAN(茨城)の顛末は、音楽ファンのみならず、世間一般の大きな注目を集めた。

 ちなみに筆者は、緊急事態宣言の真っ最中に開催したFUJI ROCK FESTIVAL(新潟)に参加。例年の4割程度に抑えられた観客は“酒なし”“マスク着用”“声出し禁止”などのルールをほぼ完全に守り、安心して音楽を楽しむことができた。SNSでは「こんな時期にフェスをやるなんてどうかしてる」と罵詈雑言が溢れていたが、現場の穏やかで、安全性に最大限配慮していた運営とのギャップは本当にすさまじかった。

 そしてコロナ禍3年目となる2022年。「これ以上、フェスを止めることはできない」とばかりに、FUJI ROCK FESTIVAL、SUMMER SONIC(千葉)をはじめ全国のフェスが開催を発表している。4/29~5/1に宮城県・みちのく公園で行われる「ARABAKI ROCK FEST.」もその一つだ。

■開催か中止か。地元でも割れた意見

 2001年にスタートした「ARABAKI ROCK FEST.」は、東北を代表する音楽フェスだ。若手からベテランまで幅広いアーティストが出演。ここでしか見られないセッションやコラボもこのフェスの名物で、音楽ファンからの強い支持を得ている。

 しかしこの2年は、他の多くのフェスと同じく、コロナの影響で中止。特に昨年は「観客は基本、会場内でキャンプ」という新たなコンセプトを打ち出して準備を進めていた。参加者の移動を少なくできることや、ホテル等を利用せずテントというプライベート空間での宿泊を可能にするというメリットも考えての対策だったが、結局コロナの状況悪化により開催には至らなかった。

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森朋之

森朋之

森朋之(もり・ともゆき)/音楽ライター。1990年代の終わりからライターとして活動をはじめ、延べ5000組以上のアーティストのインタビューを担当。ロックバンド、シンガーソングライターからアニソンまで、日本のポピュラーミュージック全般が守備範囲。主な寄稿先に、音楽ナタリー、リアルサウンド、オリコンなど。

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フェスの開催に医師会からの反対も