25年以上の歴史を持つ作家・林真理子さんの連載「マリコのゲストコレクション」。週刊朝日ゆかりの人による、100年たっても色あせない選りすぐりの名言を振り返ります。
【写真】篠山さん撮影!宮崎美子さんがを飾った1980年の週刊朝日表紙はこちら
今回は、常にメディアの最前線に立ってきた写真家の篠山紀信さん。人物、建築、美術、風景など被写体のジャンルは多様で、傑作の数々は世界で知られています。約20年ものあいだ、雑誌文化全盛のころの週刊朝日の表紙も撮り続けました。対談では、被写体に対する真摯な思いや、撮影時の考え方を語った篠山さん。そして話題は、マリコさんが机の上に飾っている「写真」のことに──。2009年6月5日号掲載
表紙撮影(1978年4月~97年10月)
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篠山:女性が生まれたままの姿で出てきてくれたら、こんなおいしい素材はないんです。ヌードって写真家にとって表現の自由度が高いわけ。
林:篠山さん、いいことおっしゃってますよね。「僕にとって美しい女性とは、今、僕のカメラの前にいる人です」って。
篠山:それはそうでしょう! 撮る人をいいなと思って撮らなきゃ。* たるみはたるみなりに、シワはシワなりに、おもしろさ、よさを感じて撮らないとダメ。この人をおとしめてやろうとか、グロテスクに撮ってやろうと思った写真、一枚もないですよ。まあ、そこがわたくしの限界ともいえるんだけど。善意のカメラマンだから(笑)。
林:いやいや、素晴らしいです。
篠山:基本的に、写真は全部「イタダキ!」だと思ってるから、天気が曇っていれば、柔らかい光でいいなと思うし、強い風が吹いていれば、髪の毛が乱れて色っぽいなとか、僕は全天候カメラマンなの(笑)。そうやっていくと、相手のいちばんいいところをもらえるわけですよ。
林:ヌードじゃないですけど、私も何度か撮っていただいて、シャッターを切りながら「きれいだよ!」「ステキだよ!」と言ってくださって。ポラがあがると、みなさん寄ってたかって「ワー、きれい!」。さらに篠山さんがポラにサインまでしてくださって。撮られた女の人は幸せな気分で帰れますよね(笑)。