篠山:それでいいでしょう?

林:ほんとに篠山さんって、輝く原石を探し出し、評価が定まった人も、撮ることによってそこに新たな意味が加わるというか。そんな写真家いませんよ。

篠山:特別なことは何もないんですよ。時代、時代におもしろい人が出てくるから、うまくスッと寄ってって、いちばんいいタイミングでいただく。「いいとき撮り」ですよ。

林:それは「篠山紀信」というブランドがあるからで、私はいつも言ってますけど「特等席にいらっしゃる」って。

篠山:特等席にいる努力は、いちおうしてるんだけど(笑)。

篠山:でも昔、「小説新潮」の「作家の仕事場」で林さんを撮らせてもらいましたね。撮ってると寝ちゃうんだよね。「疲れたぁ~」とか言って。あれはかわいかった。

林:今も机に飾ってありますよ。ほんとにあどけないかわいい少女だったんですよね。って、自分で言っちゃった(笑)。結婚式の写真もこのスタジオで撮っていただきました。おかげで続いてますよ(笑)。

篠山:アハハハ、素晴らしい!(パチパチと手をたたく)

林:プライベートで付き合うなら、どういう女の人が楽しいですか。ありとあらゆる美しい人に会ったわけでしょう?

篠山:「この人撮ってみたいな」と思う人がなかなか落ちないとき、いろいろ手練手管を使って落ちかけていくときが、いちばんいいですね。 * 撮るだけじゃなく、僕の場合は発表ということがあるからね。覚悟を決めてもらうわけじゃないですか。だから、僕の前に被写体としていてくれる人に対して、すごいリスペクトしますよ。ありがたいと思う。

(構成/本誌・直木詩帆)

週刊朝日  2022年3月4日号

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