試合の勝敗にかかわる重要局面では、強打者を敬遠して次の打者と勝負するのも作戦のひとつ。一塁が空いていれば、なおさらその確率は高くなるが、当然、次打者は侮られたような気持になり、面白くない。そして、「オレと勝負したことを後悔させてやる」と燃えに燃え、自らのバットで試合を決めた打者も数多い。そんな男の意地が炸裂した名場面を振り返ってみよう。
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目の前で3番打者が敬遠されたことで闘志に火がつき、4番の意地を見せたのが、日本ハム時代の中田翔だ。
2016年の日本シリーズ第3戦、1点を追う日本ハムは2死二塁のチャンスで3番・大谷翔平が打席に立ったが、広島バッテリーは、この日二塁打2本と当たっている大谷を歩かせ、3打数無安打の中田との勝負を選んだ。
4番のプライドを傷つけられ、「さすがに気合が入った」という中田は、「ストライクが来たらスイングをしようと思っていました」とカウント2-0からジャクソンの外角スライダーを打ちにいった。
バットの先に当たった打球は、けっして会心の当たりではなかったが、中田の執念が乗り移ったように左前にポトリと落ちると、松山竜平の後逸を誘発。起死回生の同点タイムリー二塁打となった。
この一打が延長10回の大谷の決勝打を呼び込み、日本ハムはシリーズ初勝利。中田は第4戦でも6回に同点ソロを放つなど、10年ぶりの日本一に貢献した。
その後も中田は、19年3月29日のオリックス戦では、延長10回に前打者2人が申告敬遠で歩かされた直後、「あるとは思ってたけど、目の前で見たら、ナメてるのかなと思って、すごく気合が入った」と、開幕戦史上3人目のサヨナラ満塁弾をぶち込んでいる。
1度だけならまだしも、3打席連続で前打者が敬遠されるという屈辱に心が折れながらも、“3度目の正直”で見事雪辱をはたしたのが、巨人・亀井善行だ。
17年6月18日のロッテ戦、右膝を負傷した阿部慎之助に代わって7回の守備から5番に入った亀井は、ロッテバッテリーに“安パイ”のように扱われ、8回1死一塁、10回2死三塁で、いずれも4番・マギーが目の前で敬遠された。8回は一打勝ち越し、10回は一打サヨナラのチャンスだったが、亀井は捕邪飛と空振り三振に倒れ、無念の思いを噛みしめる。